どの天体が手前にあり,どの天体が背景にあるのか
19周年,記念画像
2009_04_21
 ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が打ち上げから19周年を迎え,その記念画像が公開された。
 1990年に打ち上げられたHSTは,これまでに88万回以上の観測を行い,29,000個もの天体を57万枚以上の画像に収めてきた。公開されたのは,同望遠鏡の打ち上げ19周年を記念する画像である。
 われわれに比較的近い宇宙には,銀河どうしの衝突や合体の現場が数千箇所存在していることがわかっている。HSTも過去19年間に,数多くの衝突銀河をとらえてきた。記念画像に見られるのは「Arp 194」と呼ばれる銀河の集まりで,おおぐま座の方向約6億光年の距離に位置している。
 複数な銀河が接近すると,互いの重力の影響でさまざまな形の変化が引き起こされる。Arp 194の画像中,上方に見えるのは合体の初期段階にある2つの銀河,その下には普通の渦巻き銀河が見えている合体する2つの銀河から,まるで水がこぼれ落ちるかのように,明るく青い物質の流れが10万光年ほどの長さに伸びている。これは,銀河の腕が引き伸ばされたものである。そこには,10以上の星団から構成されている超星団(super star cluster)が存在している。流れが青く見えているのは,星団を構成する高温の大質量星の放射によるものである。
 合体しつつある2つの銀河と画像下に見える銀河とは,一見つながっているように見える。しかし,下方の銀河は,実際には背後に位置しており,衝突銀河とは接触していない。このように表面上重なって見えている天体も,HSTのシャープな画像ならば,どの天体が手前にあり,どの天体が背景にあるのかを区別することが可能なのである。(ステラナビゲーションより
NASA